|配信設定とマイク活用のコツ
ハイブリッドイベントのクオリティを決める重要要素として、多くの現場では映像・照明・ステージ演出が重視されがちですが、実際の参加者満足度や視聴継続率を左右するのは音声品質です。
配信視聴者データの分析でも、映像トラブルより音声トラブルが起きた瞬間に離脱率が上昇する傾向があることが知られています。音声が聞こえない、途切れる、響く、ノイズやハウリングが起きるといった状況は、視聴者にストレスを与え、クレームにつながるリスクもあります。
さらに、人間の認知心理学では、映像よりも音声の方が記憶に残りやすいという研究も存在します。つまり、内容が素晴らしいイベントでも音声が悪ければ、視聴者の記憶に残るのは「いい話だったイベント」ではなく、**「聞きづらかったイベント」**です。
そのため、ハイブリッドイベントにおいて音声マネジメントは、単なる技術作業ではなくイベントの価値を守るための最重要工程と言えます。
▼音声マネジメントは「拾う」「整える」「届ける」の3工程
プロが行う音声設計は、単にマイクを設置し、ミキサーを調整するだけではありません。音声を最適に届けるためには、次の3ステップが必要になります。
① 音声を正しく「拾う」設計
この工程の鍵となるのが、マイク選びと配置、そして運用方法です。
ハイブリッドイベントでは、ステージイベントや講演、パネルディスカッション、対談など形式が多様なため、用途に合わせて適切なマイクを選択する必要があります。
その際、現場のプロが共通して挙げるポイントは、
シュアーSM58ダイナミックマイクよりも、コンデンサーマイクの利用が好ましい傾向がある
という点です。
SM58は耐久性・ハウリング耐性が高く、ライブ現場では世界標準ですが、ハイブリッドイベント配信では以下の課題が現れます:
- 声がこもって聞こえる
- 声量が小さい登壇者だと音が弱くなる
- 表現力や息づかいが伝わりにくい
一方、コンデンサーマイクは高音域の再現性に優れ、声の輪郭・息づかい・抑揚まで拾うため、オンライン視聴者側の聞きやすさが大きく改善します。
ただし、マイク性能に頼れば良いわけではありません。重要なのはマイクの使い方です。
- マイクには指向性があり、正しい向きで使用する必要がある
- 口から近い距離(2〜5cm)で活用する
- 握り方、角度、声量に応じて距離調整をする
この運用ができない場合、どれほど高性能なマイクでも音声品質は低下します。
② 音声を適切に「整える」処理
音声の入力を拾った後、ミキサー・処理機材・配信ソフトを活用し、聞きやすい音声へ調整します。
代表的な処理は次のとおりです。
| 処理名 | 目的 |
|---|---|
| EQ(イコライザー) | 声の明瞭度をアップし、低域の濁りを抑える |
| コンプレッサー | 声が小さい人と大きい人の音量差を均等化 |
| ノイズゲート | 不要な環境音を自動でカット |
| リミッター | 大きな声による割れ・歪みを防ぐ |
この調整は、配信側と会場音響側で設定が異なる点が重要です。
会場音響に最適化された音声がそのまま配信に回ると、
- 反響が大きくなる
- 声が遠く聞こえる
- BGMや雑音が埋もれず拾われる
といった問題が起こります。
つまり、ハイブリッドイベントでは、
会場音声と配信音声を別系統で調整する二系統設計
が理想です。
③ 音声を適切に「届ける」配信設定
最終工程では、OBS、vMix、Zoom、Teams、YouTube Liveなど配信媒体に合わせて音声設定を最適化します。
特に重要な設定は以下の通りです。
- 音声ビットレート:96kbps以上推奨
- 連続配信中の音声モニタリング
- 自動音量調整(AEC)機能OFF(外部ミキサー使用時)
- 遅延確認とリップシンク調整
配信現場では、常にヘッドホンで確認するモニター担当がいることが必須条件です。
▼まとめ:音声マネジメントは参加体験の中心
ハイブリッドイベントにおける音声は、単なる技術設定ではなく、視聴体験そのものを支える基盤です。
- 音声が悪いと離脱率は上がる
- 音声トラブルはクレームにつながる
- 音声は映像以上に記憶に残る
- 音声品質=イベント価値
そしてその鍵を握るのが、
適切なマイク選定と運用、そして配信音声設計
です。
高品質な音声は、視聴者の集中力と満足度を高め、イベント評価やブランド価値につながります。
ハイブリッドイベント時代に求められる音声マネジメントは、まさにプロフェッショナルな設計と運用が問われる領域なのです。


